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直根森林鉄道を歩く

2019年9月13日

 

僕らは百宅にいた。百宅は古くは鳥海マタギのふるさととして知られる。冬には3mもの豪雪によって都市部とは隔絶された土地となる。百宅川が造り出した盆地には今も茅葺屋根が残る。小中学校もあり最盛期には小学生137人、中学生97人が在籍していた。それも今はむかし。農機具小屋となった中学校跡地と濁ったプールが残るのみである。さらに鳥海ダムの完成によりそれすらダム湖の底に沈む。

今回のスタート地点には、デカデカとダムができてよい事しかありませんよという、メッセージボードがあった。完成予想図を見てみると今いる地点がどうやらダム湖の最深部らしい。

さっそく、我々は障害に当たる。工事のための通行止めだ。隣には発破時間が書いてある。これは・・迂回かと思い迂回するも道がない。一か八かで通りたい旨を作業員へ告げると快くお許しをいただけたため、そそくさと森林鉄道跡の土手を歩いた。

遠くのほうに工事車両が見える。別の作業員に怒られないため、足早に探索を開始する。発破時間はとうに過ぎていたため心配はないが、なによりこの歳になってまで怒られたくはない。

土手を歩き切ると、百宅川にかかる鉄橋に出会えた。航空写真でも確認することができ、いまだ健在ということも知っていたが、やはり本物を見ると感動する。この上を秋田杉を大量に積み込んだ小さな機関車が通過していく姿を妄想するだけでもワクワクする風景だ。この鉄橋もあと数年後にはダムの底だが。

立派なガーター橋はダムの工事関係者も使用するらしく、単管パイプの手すりが備え付けられていた。安心して渡ることができた。

鉄橋を渡りきると探索の開始だ。しかしどこか使用感があり、あまり「廃」感がない。

その原因は、これだった。ダムの堤体の両端を支える岩盤をむき出しにするための工事が行われていた。坑道を深く掘り、発破もしくは調査抗だろう。作業員何人かが休憩をとっていた。簡単に挨拶を交わすと袖川のほうに抜ける旨を伝え、工事現場内を通過させていただいた。

お気楽なハイキングコースかと思いきや、突然路盤が崩落していた。しっかり前を注意しながら歩いていてよかった。気を抜いたら下を流れる子吉川へ一直線だ。ここは高巻き作戦で切り抜けた。虎ロープがなぜか設置されており、ここの高巻きは難易度は低い。

高巻き地点を振り返る。草木が鬱蒼としていて気づきにくいのがお判りいただけるだろうか。

その後は、比較的しっかりとした路盤が続く。子吉川から2m程度の高地を歩くので比較的怖さもない。

ダムの関係者が刈ったであろう森林跡地。こうしてみると、どこかの里山のハイキングコースのようだ。

左手が急に開けた。ここがダム建設予定地である。簡易的に橋が作られており、対岸まで渡れるようになっていた。遠くのほうでは重機の動く音が聞こえてくる。

綺麗に夏草が刈られれいるのは先ほどの場所までか、、と思ったがどうやらこの先も続くらしい。親切な方がいたものだ。

夏草が伸びきっており、いまいち森林鉄道の路盤をつかめないが、右に見える岩には明らかに掘削の跡があり、かつての人の営みを感じる。

子吉川が近づいてきた部分には簡易的な護岸が作られていた。といっても現在は護岸の下は崩れ落ちている。さらに崖からも土砂が蓄積しており、人ひとりが歩くのがやっとのスペースしか残ってはいない。

小川を渡る、探索の相棒。

写真を見ると思ったほど狭くはないが、落ちたくはないので緊張が走る。コンクリートの橋も一本しか残ってはいないが、森林鉄道時代には2本しっかりと架かっていたのだろう。

壁に立てかけられた枕木を見つけた。この探索で初めての鉄道的遺物である。

犬釘も見て取れる、「60」の文字がしっかりと刻まれている。

倒木をくぐると、そこに現れたのは・・・・

袖川第三トンネルである。

圧倒的存在感!!!!!!!!!

 

百宅→袖川第三トンネル(続)

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