2024年3月に岐阜県へ移住した。理由は転職である。
愛知県生まれではあるし、祖母の家が富山県にあるため、岐阜は身近な土地ではあった。
大学から見ず知らずの北東北の土地に飛ぶほどの経験をした今、さほど大きな決断ではない。
趣味のほうも、愛知県の名鉄の末端区間から、岐阜の3セクを撮影するルーティンへなった。
引っ越す決断をする前の私の携帯履歴は「長良川鉄道 撮影地」や「長良川鉄道 俯瞰」といった文字列であふれていた。しかしヒットするのはどこも同じような場所ばかり。 しかし、日々の労働に追われる私は、「まあ72kmもあるローカル線、きっと楽しいだろう」と楽観的な感情で移住を決断した。
引っ越しの作業を一通り終えた私は、さっそく沿線へ駆け出した。何の気なしに近場の交換駅で大きそうな駅に目星をつけた私は、長良川鉄道の富加駅にやってきた。3月の少し暖かい木漏れ日に包まれたの駅はどこか懐かしく、良い雰囲気だ。市街地側(と言っても古めの住宅が密集して立っているだけだが。)の駅舎は木造であり、国鉄時代からの生き残りだと思われる。駅構内にも貨物側線とホームが残っており当時の姿を今に偲ばせる。
10分ほど待ち適当に列車を撮影後、列車を見送ると、散歩中の柴犬と飼い主が構内踏切を渡って反対側の市街地側へ戻る。
その瞬間
「ああこの鉄道にして正解だったな」
と確信めいたものを感じた。こういうゆるさが私の求めていたものである。